特許庁に対し特許出願をして特許権を付与されると特許として一定の独占権を得ることができます。
しかしながら特許権が成立したからと言って安心できない事態が生じえます。いったん成立した特許権が権利行使不能と判断されることがあるのです。
特許の成立要件はいくつかあり、それらについて特許庁の審査官によって不特許理由が認定されなければ権利となります。この手続きは既定の審査基準に基づいて公平に行われるわけですが、必ずしも普遍的ではありません。新規性・進歩性は審査官が知り得る範囲の事実に限られ、その調査は主に文献が調査されます。つまり公知の技術資料等に基づくもので必ずしも十分ではない可能性があります。さらに、ある技術的な記載Aを知って特定の技術Bを想起するかという進歩性については個々の審査官の技術レベルに応じた技術評価に依存します。
これは”行政”(=特許庁)による特許性の”確認”(=特許)がされたということであり、新たな事実を見つけることさえできればいったん成立した特許権の効力を無効にすることができるのです。
特許権に基づく侵害訴訟を受けた場合、真っ先に行うべき技術調査は新たな事実、つまり特許審査時に評価されなかった公知例を見つけ出すことです。昨今の情報化社会にあっては公知例となりうる文献資料は比較的容易に見つけ出すことができることが多いのです。
こういった事情もあって既得権利を持つ者は法的に不安定であり、特に日本では特許権侵害訴訟を提起することのリスクが大きく米国と比較してその件数が少ないのはこのためです。権利行使したはずが、逆に特許無効となるリスクが大きいのです。
ちなみに”特許無効”とは特許権自体が消滅すること以外にも、個別の裁判の中で当該事件に関してのみ無効となるケースがあります。下記リンクの事件では後者のケースですので、権利行使不能とはなるものの、この判決自体によっては当該特許権は消滅しません。
「特許は無効」化粧品の商品販売差し止め退ける判決
特許無効
投稿日:2016年8月31日 更新日:
執筆者:chisou