話題

特許無効

投稿日:2016年8月31日 更新日:

特許庁に対し特許出願をして特許権を付与されると特許として一定の独占権を得ることができます。
しかしながら特許権が成立したからと言って安心できない事態が生じえます。いったん成立した特許権が権利行使不能と判断されることがあるのです。
特許の成立要件はいくつかあり、それらについて特許庁の審査官によって不特許理由が認定されなければ権利となります。この手続きは既定の審査基準に基づいて公平に行われるわけですが、必ずしも普遍的ではありません。新規性・進歩性は審査官が知り得る範囲の事実に限られ、その調査は主に文献が調査されます。つまり公知の技術資料等に基づくもので必ずしも十分ではない可能性があります。さらに、ある技術的な記載Aを知って特定の技術Bを想起するかという進歩性については個々の審査官の技術レベルに応じた技術評価に依存します。
これは”行政”(=特許庁)による特許性の”確認”(=特許)がされたということであり、新たな事実を見つけることさえできればいったん成立した特許権の効力を無効にすることができるのです。
特許権に基づく侵害訴訟を受けた場合、真っ先に行うべき技術調査は新たな事実、つまり特許審査時に評価されなかった公知例を見つけ出すことです。昨今の情報化社会にあっては公知例となりうる文献資料は比較的容易に見つけ出すことができることが多いのです。
こういった事情もあって既得権利を持つ者は法的に不安定であり、特に日本では特許権侵害訴訟を提起することのリスクが大きく米国と比較してその件数が少ないのはこのためです。権利行使したはずが、逆に特許無効となるリスクが大きいのです。
ちなみに”特許無効”とは特許権自体が消滅すること以外にも、個別の裁判の中で当該事件に関してのみ無効となるケースがあります。下記リンクの事件では後者のケースですので、権利行使不能とはなるものの、この判決自体によっては当該特許権は消滅しません。
「特許は無効」化粧品の商品販売差し止め退ける判決

-話題
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

関連記事

no image

不当表示

 昨年は自動車の燃費について、事実とは異なる表示をしていたとして問題となりました。この事件については景品表示法違反という判断に落ち着くようです。  製品への不当表示という問題は、それを管轄する法律が存 …

no image

パテント政策

 米国は訴訟大国と呼ばれるように、知的財産権のような特許権についても常に訴訟が繰り返されています。特許をネタに損害賠償金やライセンス料を請求するパテントトロール(「パテントトロール」)のような存在も出 …

no image

商標法違反

 つい先日のこと、千葉地裁で商標法違反による有罪判決が下されました。  商標法による罰則というと無断で会社名や商品名を使用したような場合を想像しますが、今回のケースは非常に興味深いものでした。  記事 …

no image

グローバル行政力

 「技術立国」、「日本再生」を掲げて日本を元気にしようとする政策が実施されています。日本の経済力を高めることをミッションとしている経済産業省は特許施策としていくつかの緩和政策を打ち出しています。  資 …

no image

経営モデルと訴訟リスク

 ある記事で、誰でもよく知っている二大世界企業の経営モデルを比較して論評していました。ここでは”経営”という切り口による企業の明暗を論じたものですが、私はこれを見て別の現実、つまり知的財産についての訴 …

2016年8月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
  • 161今日の閲覧数:
  • 159今日の訪問者数: