PCTにもとづく国際出願のお話をしたときに最先の出願日(優先日)という言葉が出てきたのですが、出願日というのは知的財産権にとっては非常に重要です。
世界の国々の知的財産関連法をみると、先発明主義と先願主義の二つに大別されます。
先発明主義とは、最先に発明をした者が権利を得るのが当然と考えることであり、先願主義とは最初に出願した者が権利を得るという考え方です。本来は発明の内容は発明者しか知り得ないため最先の出願人が真の発明者であることは普通のように感じるかも知れませんが、さまざまなケースがあって必ずしもイコールにはならないこともあります。この辺りは簡単には説明しきれませんし、複雑なケースの判断は士業が行うべき分野になりますのでこれくらいにしておきます。
先発明主義では発明日、先願主義では出願日の前後で権利を受けられる人が決まります。自然人が発明するのだから発明日が判定基準であるべきですが、先願主義の良いところは権利を得られる人が誰であるかの争いが無いからです。行政庁たる特許庁に出願書類を提出した日で前後の判定ができるわけですから、法的安定性の面で優れています。
そういった理由で、いまでは世界の多くの国が先願主義を採用しています。以前米国が先発明主義でしたが、2013年3月の出願分から(ほぼ!?)先願主義に移行しました。
法的な面からすると、世界貿易の観点では先発明主義国と先願主義国が混在していると非常に面倒になります。それが出願件数が常にトップの米国でしたので厄介なことこの上ない事態だったのです。
さて、先願主義の話に戻りますが、ある出願にかかる出願日の認定は出願を受け付けた各国特許庁がよくわかっているはずです。よって、優先日はその国の特許庁が証明することになります。その書類が優先権書類と呼ばれます。
特許法をはじめ、法律は各国ごとに有効な法律が存在します。(属地性)
したがって他国の行政庁に出願された出願だからといって、内国民と同様の扱いをする(最恵国待遇)必要はありません。
実際にはパリ条約、PCT(「国際出願ランキング」)そして発効が危ぶまれるTPP(「TPPにおける知財合意」)といった国家間条約で出願日を優先日として認めるなど、出願手続きに関しての取り扱いを取り決めています。
そして、これらの条約にもとづく知的財産権にかかる出願をする際には、最初に出願した先の特許庁の優先権書類を添付する必要があるのです。
記事では日本の出願が最先の場合に、その出願を他国に出願する際に必要な優先権書類を出してもらうための、特許庁に対する手続きを数年以内に迅速かつ簡単にできるように改善する、ということです。
記載されているように従来は紙による申請でしたが、意匠出願については今もそうなのでしょうか。
少なくとも、記事中に出てくる韓国特許庁に対して日本出願を基礎とした優先権を主張する場合には、すでに電子的交換がなされていて特許庁間の書面による提出は不要になっているはずです。
補足いたします。
日本の意匠法に関していえば現時点においても優先権証明書のやりとりは電子化されていません。添付の記事のように紙での運用が依然として行われています。理由としては現行の意匠法が特許法43条第5項を準用していないことです。
この事態に鑑み特許などと同様にパリ条約に基づく各国間、あるいはWIPOが運用するDAS(Digital Access Service)を取り込もうという動きがある、ということです。具体的には電磁気的方法による優先権証明書の運用を意匠法でも準用するという手続きを進めることになります。