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異業種連携(その2)

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 事業内容が異なる企業がお互いの補完関係を築きながら新たな事業に乗り出すとき、異業種ゆえの困難もあるという投稿を以前したことがあります。(「異業種連携」)
 今回はその続きとなります。放送会社と大手IT企業との連携です。

 テレビなどのマスメディアが視聴者に向けたIT化を強く意識し始めたのは、つい最近のことです。以前はマスメディアは新聞や書籍などと同じで、一方通行の情報発信をするのが仕事であって、それを視聴した視聴者の反響を受けて企画を立てるという流れができていたかと思います。
 今では4K、8Kと画像の綺麗さを売りにしたり、視聴者とのインタラクティブ(双方向)のインタフェースを提供して番組プログラムへの関心を高める努力がされてきました。

 おそらくは、それらの施策も思ったような効果は上がっておらず、グローバルで自由なインターネットには抗えないということが段々と明らかになってきたのではないでしょうか。

 テレビ放送というのは、日本国内で放送されるコンテンツはほとんどの番組が日本人向けに作られています。むしろそう作成せざるを得ないといった感じでしょうか。従って日本の放送コンテンツはガラパゴス化しており、視聴者の数は限定的になります。その視聴者でさえインターネットに食われているということで、打開策がいろいろなところで議論されています。
 世界の共通語が英語でなく日本語だったら、あるいは日本が英語を母国語としていたらそんな心配はなかったかもしれません。

 コンテンツ自体の質に問題がないとしたとき、もしもこの仮説が正しいのであれば既存の放送コンテンツを翻訳することで海外の視聴者を取り込むことができます。ただ、日々放送されるコンテンツを適時に正しく翻訳するリソースがありません。

 記事では放送会社はこれをAIの翻訳技術を適用してリアルタイム翻訳ができないかと考えているようです。そのために、放送会社にとっては全くの異業種であるこの分野に強い大手IT企業と提携することを考えました。

 一方、大手IT企業はAIを学習させるために必要な、INとOUTが分かっている大量のデータを入手することができます。この提携はお互いにWIN-WINな関係が築けています。

 正確に翻訳するには、発声された単語を場面の状況やその時々の情勢に応じて”意訳”することも必要になってくるでしょう。単語の意味を直訳しただけではバックグラウンドが異なる民族には理解できないことも多々あるでしょうし、国民性からくるタブーな文言に対する対処も必要になるかも知れません。コンテンツの内容自体も、理解してそれ相応の対応もしなければならないかも知れません。
 現在は人がそれを見て確認するしかないわけですが、リソースが足りないばかりか確認する人によるムラが排除できないであろうことは明らかです。

 こういった用途へのAIの応用は至極理にかなっていると考えます。
 ただし、考えようによってはこれは機械による検閲ともいえるので、同社がマスメディアであるという性格上、AIを手放しで信用してしまうのは危険です。一定の歯止めも必要だと思います。

 しかしこういったAIの応用技術を特許で保護しようとした場合、他者の参入や技術模倣に対して効果的に防衛可能なクレームが書き起こせるかは大いに疑問です。AIの思考結果に対して、○○を行うと××という結果が導けるという客観的で簡潔な理論が確立できないと差し止めなどの権利行使は難しそうです。
 今回の事例では思考過程はあまり重要ではなくAIが導出した結果がすべてですので、開発企業は権利化を目指すよりはむしろその技術を秘匿して実績勝負の途を選択するべきかと思います。

 AIは用途が限定された技術ではありません。しかもAIを適用して効果が得られる事象の情報は開発した企業の中には保有されていないことが多く、それらの情報は総じて異業種で活躍する企業が持っています。

 このような異業種間で提携して情報(コト)と技術(モノ)が出会えるような動きがもっと出てくると良いと思います。

フジ、AIで日本マイクロソフトと提携:日本経済新聞

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  1. […]  以前の投稿(「異業種連携(その2)」)で異なる業種の企業と組んで事業展開するといった視点での企業戦略について触れました。  今回のタイトル「知財戦略」はどちらかというと […]

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