特許権を所得したとき、実施を独占するほかにも、第三者にその特許を使う権利を金銭などで付与することがあります。これを実施料、ライセンス料などと言います。額の見積もり方法は多岐にわたっており、徴収の方法についても一概には言えません。特に一定の徴収方法が法律で定められているわけではありません。
特許の運用と、その企業の事業との関係は業界でかなり異なります。
折に触れ言及している製造業のような場合には、特許発明は比較的小粒ですが一つ製品に使われる特許権の数は膨大になります。すべてについて言えるわけではないかも知れませんが、一つの特許の取扱いで事業そのものが立ち行かなくなるような重篤な事態にはなかなか成り難いといえます。
これとは真逆の、一つの特許権を取得するために膨大な研究費と歳月を費やし、一方その権利が膨大な利益を生む業界があります。それは医療分野、製薬業、創薬業の分野です。
一つの薬を生み出すために幾多の実験を行い、多くの組み合わせを検討し、結果製品になるのは極々限られた成果のみです。一つ一つの発明とその発明を出願した特許出願の重みが違います。
新薬は開発に時間が掛かるばかりでなく、薬として正式に認められるためには当局の承認が必要です。これにも長い審査期間が必要です。
これを考慮して特許法第六十七条の2(存続期間の延長登録)という制度が設けられています。ご承知のように特許権は出願から20年とされていますが、特許法第六十七条第二項には一定の場合には存続期間の延長が認められるとされています。審査を経て権利になったとしても薬事法等の制限のために実施ができない期間が長くかかれば権利を行使する期間が限られるばかりでなく、承認されたときにはすでに権利期間が終わっている場合もあり得ます。特許後の実施不能期間に限り、最長5年まで認められます。
政令で定める上記延長が認められる薬事法や農薬取締法以外にも法律で実施が制限される場合もあるとは思いますが、この法規制の場合だけに延長が認められていることをみても、同業界にとっての権利の重要さがうかがえます。
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添付の記事は”新薬の価格はなぜ高いのか”という視点で書かれています。一時期、時事ニュースにもなった高額な特効薬についても書かれています。
記事の中では、医薬品の収益は「国内事業、海外事業、海外からのライセンス収入」とされており、ここでも医薬品関連の特許権の重要さが感じられます。
しかしながらライセンス収入にかかる費用は直接患者が払うわけではないので、開発した製薬会社にとって”ライセンス料が高額だから薬が高い”という理屈は成り立ちません。この点については国内の薬価問題とは無関係と述べており、議論がかみ合っていないように感じます。
結局はステークホルダーへの還元資金や次期開発資金の確保のために必要な額なのだという説明で押し切られています。それだけでなく新薬の価値を認め、高額であることを容認すべきとも論じています。
新薬が高い本当の理由はそれくらいにして、医薬品が高いのは高額な開発費用と高額なライセンス料のためであることは確かです。
上述のように、たとえ存続期間の延長があったとしても出願から25年経過すれば権利は消滅し、少なくともライセンス料を徴収する権原を失います。高額なライセンス料が不要になれば製薬会社は製造にかかる費用のみで同じ薬効のある薬が作れることになります。
これが一般にいう”ジェネリック医薬品”のからくりです。