サーバというと、パソコンなどが個人で利用することを前提とした機器と認識されるのに対し、インターネットやクラウド上に配置され、主にネット越しのサービスの提供目的で使用される比較的大規模な設備と言えます。この設備を個人で購入することはほとんどなく、企業が自社のサービス向上のために設備投資する機材という位置づけとなります。
サーバ設備が高価なのは、設備自体が高度な信頼性を必要とするからです。webサーバやメールサーバのような用途を考えたとき、24H常に稼働していることが求められます。これがちょくちょく停止していたら、それこそその企業の評価が下がってしまう大きな要因となります。
常に動作するという指標は可用性と呼ばれます。それ以外にもレスポンスもそこそこ維持しないとサービスしていないのと同じになってしまいますので、これも大変重要な指標です。
これらを同時に満たすとなると、パソコンなどとは比べ物にならないほどの初期投資と、冷却装置、電力量といった莫大で常時発生する運用コストがかかるのは想像に難くありません。
インターネットの覇権が企業競争の一端を示していた少し前までの企業間競争では、大きな負担を背負いながらも企業毎にサーバ設備を導入し、サーバセンタを整備し、サービスレベル維持のために設備増強を行ってきました。当然設備の更新も数年単位で行わなければなりません。
サーバを製造、販売する企業は、パソコンやスマートフォンの増加に連れて伸びるデータ処理量に比例して増える需要に支えられてきました。メインフレームで世界を制覇した米国IT企業も大きな利益を手にしたと考えます。
しかしながらサーバセンタ運営とは全く関係のない企業にとって、自社サービスのためだけにこれら設備を抱えることに限界を感じるのにそれほど時間はかかりませんでした。
そこで設備投資を一手に行い、マシンパワーを切り売りするサービス企業が表れました。設備投資、設備運用の煩わしさを排除し、各企業ごとに特徴を訴求するサービスに専念することができる環境が実現します。
サービスの形態は、ユーザ企業の自由度を許容するためにいくつかのレベルが用意されました。プロバイダが貸し出すレベルに応じてIaaS(Infrastructure as a Service)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)として、そして最近は情報漏えいやサイバー攻撃といったリスクを反映してDaaS(Desktop as a Service)というサービスも好評なようです。
Iは設備の貸し出し、Sは所定のソフトウェアをネット越しに提供するサービス、Pは設備を含めた環境の貸し出しです。Dも主に複数のパソコンに対してデスクトップ環境を提供するものですから、SとPの合わせ技と言えるかもしれません。
上記のように、新興のネット企業は自らが投資したサーバ設備の余剰分を、本業で培った専門のノウハウと共に外部の企業に貸し出すようになりました。ネット企業にとっては遊休設備の有効活用ができるし、借りる側は煩雑で困難な作業から解放されるという、ネット時代の課題はWIN-WINの関係で解消されることとなりました。
企業秘密データを多く抱える社内サーバを外部の企業の手中に置くという判断は、一見すると非常識と思われる行為です。そこはコストと信頼性とIT技術を駆使してハードルを下げることで、新たな事業を創造することができたという好例でしょう。
そうは言っても、インターネットサービスやクラウドサービスが伸張する以上、サーバ設備を供給する企業も安泰なのではないかと考えてしまいますが、実のところ一社にパワーが集中すると設備の最適化が進むために全体として設備投資は鈍化します。
業務のネットワーク化、デジタル化(「デジタルトランスフォーメーション」)は今後も進むと思われますが、インターネットが益々高速化され、いよいよサーバを抱え込む必要がない、自社内にサーバを置くよりもむしろネットワーク越しにサービスを受けた方が最新でパワフルな処理環境を得られるという逆転現象が生じています。
サーバ製造企業はハードウェアだけでは儲けが出にくくなっており、SaaSやPaaSのようにアプリケーションや使いやすい環境の提供を提供するといったユーザの方向を向いた事業へとシフトしてゆく必要性に迫られています。