業界で”ブランド”というといくつかのイメージが浮かぶかと思います。不思議なもので、人によって思い浮かべるイメージはかなり違うのではないでしょうか。
今回は意匠権にかかるブランドについて考えてみたいと思います。添付の記事は意匠法の改正につながる話となっています。
企業イメージの醸造という意味でいえば、ブランドは商標の方がしっくり来るように思います。社名や商品名は商標法で保護されるということです。
他方、製品を見ればどこの商品かが分かる、といった形状・模様・色彩にかかる権利は意匠法の対象です。要するにデザインに特徴があり、他の製品と差別化が図れるまでに大衆に受け入れられるような見栄えです。出所表示機能とも言います。
他社製品とは違うと認識される程度に認知されることが要件という意味では商標も意匠も同じ機能ではありますが、意匠は物の形状のうえにしか成立しないところは異なります。意匠は物品とは離れて存在しえないのです。
ややもすると商標と意匠は混同して考えてしまいそうになりますが、保護したいものによって守備範囲が異なることをきちんと区別しなければなりません。
物品と共に存在する意匠権は上述したとおりです。すると意匠の存在目的はどこにあるのでしょうか。
答えは、昨今よく耳にする「工業デザイン」(Industry Design:ID)を保護するための権利となります。
工業デザインは、たとえば工場で大量生産する製品の形状です。意匠のポイントは、この”工場”で”大量生産”というところにあります。
これが意匠の要件だとすると、次の場合は意匠権で保護されるでしょうか?
- 有名画家が描いた絵画
- 東洋一と噂の槍状のタワー
- 丸太で組まれた山小屋
- 入口、窓、看板などを含めた店舗の外装
1番の”絵画”は、通常は画家が描く一品ものですから大量生産に向かないとして意匠権は得られません。むしろ著作権の範囲です。
2番の”タワー”は建造物に当たります。すると建造物は不動産の扱いとなります。審査基準では建造物を含む不動産は意匠権を得られないとされています。
不動産も広義には物品ではないか、と思われるかもしれませんが同じものを大量生産するという要件からはいささか外れるかと思います。
3番の”山小屋”は、不動産であるため意匠権では守られないというのが通説です。しかしながら、そこそこ小型の山小屋であれば同じデザインの小屋をプレハブのように工場で相当数生産することは可能な場合もあります。実は、この場合には意匠権の対象とされることがあります。
4番の”店舗”は、やはり不動産ですから意匠権は得られません。さらに”山小屋”のような量産性は無いので例外はほとんどないはずです。もちろん店舗の前に設える窓枠やドアの形状、庇などは個別に意匠権を得ることは可能です。
この事例で何が申し上げたいかというと、現在は不動産の形状はほぼほぼ意匠権では保護されないということです。
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添付の記事によると、世界からみたときの日本の意匠の停滞に鑑み、今後の発展も期待して次のような観点での改正を検討するようです。
- 異なる製品分類に渡る、出所識別力のある一体性のある工業デザインの保護
- 一目見てどこの店かがわかる店舗のデザインの保護
ⅰについていえば、今でも複数の物品を含む意匠として組物の意匠や、複数の意匠を一体として扱う関連意匠制度はあります。ただ適用範囲が限定的で、昨今の工業デザインの運用にそぐわないケースが出てきているための対処ということです。
ⅱは上述したように不動産にも意匠権を認めようという動きになります。実質的にブランドとして機能する不動産についても保護対象とすべきとの認識のようです。
意匠権は工業所有権のなかでもマイナーな権利です。もっと使い勝手のよい権利となれば同制度の利用はさらに増えると思います。