「商標」の本質は、その商標権者の信用が化体したものです。たとえば、ある商標が付されているとその商品が一定の品質を備えた製品であると認識させるなど、市販されているサービスや製品を選ぶ際の目印になっています。良くも悪くも消費者は商品に付された「商標」を見てお金を払おうとします。
つい先ごろまでの商標法では、商標は文字・図形・記号といった図面上に表せるものに限られていました。しかしながら、現実世界を見渡すとそれだけではないと気が付くはずです。
たとえば特定のカラーリングの洋服を見るとメーカー名を想起できたり、テレビ画面を観ていなくても聞きなれたメロディが流れてくるとどのメーカーの製品かわかることがあります。それは前述した商標が持つ機能と同じであることが分かります。
そういった機能を持つものに対しては、従来から商標として保護してきた様式に加えて、新商標として同様に保護しようということになりました。
普通に受け入れているこういった新商標ですが、日本で法制化されたのは案外浅くわずか2年前のことです。
新たに商標に加わった標章には、
- 立体的形状である立体商標
- 色彩から構成される色彩商標
- 音であらわされる音声商標
- 標章に動きを含む動的商標
- 見る位置によって見え方が変化するホログラム商標
- 標章の付された位置に特徴がある位置商標
などがあります。もちろんこれらのいずれかとの組み合わせ、従来からある標章との組み合わせから成る標章も商標となります。
ちなみに「標章」とは単にマークや表現のことを指し、それに前述のような機能が付加されたものが「商標」と呼ばれます。さらに特許庁に出願して登録されれば「登録商標」となります。
審査に関していうと、知的財産権である商標権は独占権を有する権利であり他者の利用を排除することができる強力な権利ですので、それ相応の要件を備えていなければ登録されません。
たとえば普通に使われている物の名前や氏名、地域名などが商標として登録されてしまったら、他の国民生活に支障を来す可能性が生じます。昨日まで普通に使っていた言葉であったり記号が、明日から勝手に使えないとなったら問題だからです。
添付の記事は、これら新商標の登録状況について報告されたものです。特に色彩(のみの)商標について触れています。
色彩(のみの)商標については、商標権が強力な権利であるがゆえに単なる色彩(の組み合わせ)からなる標章の登録要件は厳しくなります。もしも白と黒のストライブからなる色彩の組み合わせが登録商標となれば、同様の印象を与える色彩を付した製品はいっさい販売できなくなってしまいます。日常的な、ある意味特徴の薄い標章は登録されるためにはハードルが高くなるのは当然のことなのです。
音声商標などは上記の色彩商標に比べれば登録のためのハードルは幾分低いかもしれません。
商標は誰の標章であるかが分かる程度に識別できること(出所表示機能)が必須ですので、世の中でよほど著名でない限りは、簡単なマークやフレーズではすでに事業で使用していたとしても法的な保護を受けるのは難しいです。
とはいえ審査基準は世の中の状況に応じて変化します。一度は出所表示機能が不十分として拒絶されたものが登録されたり、逆に一度は登録された商標が更新時に拒絶されたりすることもあり得ます。
地道に、かつ適正に”使う”以外に対策はあまりないのですが、商標権が無ければ商品に付して販売してはいけないというものでもありません。そこだけは勘違いしない方が良いと思います。
日々の企業努力により特定の商標の価値が高まり、幸か不幸か第三者による模倣品が出てくるようになれば商標権という権利化を検討すべきかなと思います。