その国の科学技術に関するレベルを図る指標として特許出願関連の数値を使うことが多くあります。特許、パテントというのは曲がりなりにも世界共通の技術ベースですので、確かに手軽な目安にはなると思います。
”曲がりなりにも”としたのは、特許といえども各国で制定する法律に依存する(属地性)ため、若干バイアスが掛かることがあると考えるからです。もっとも知的財産権を取得・維持するためには資金が掛かるのが通常ですので(特に国際出願など)、その国の産業界における経済的な面も大きく影響をするものと思われます。
このHPでも過去に何回かランキングのご紹介をしていきました。
「国際出願ランキング」「IoT出願数」「米国特許の取得ランキング」
今回は発表された学術論文からみた科学技術力を算定した記事となっています。
論文数も多岐にわたるため、上位10%の論文に限定して評価したとあります。この時点ですでに限定的にはなっています。
発表論文や特許出願から技術力を推し量ろうとするとき、発表数/出願数のみを統計データとしたのでは”参加賞”的な雑音を排除することができません。”入口”の数字は当事者の意思で如何様にも操作することが可能だからです。
そこで引用されたか否かを注目度、時代の先端技術の指標として用いることが良く行われます。論文は他者の論文を引用する形で新たな研究成果を発表する形式がとられます。つまりある論文を引用した他者の論文が多くあるほど、旬の技術であり、かつ価値のある成果という解釈を与えます。恣意的に他人の評価を操作することはできませんので、かなり客観的な統計データとなるはずです。
今回のランキングもそうした引用数をベースとして算出しています。
一方、特許を評価する場合の”引用”はどうでしょうか。
特許出願をされたことがある方はお分かりかと思いますが、特に他の出願を引用しなくても出願明細書を作成することができます。もちろん明細書中に記載することも可能ですが、一意に評価できる指標とはなりません。
米国出願であればIDS(Information Disclosure Statement:情報開示陳述書)という書面を出願人が提出しなければなりません。これは審査に影響を与えると思われる以前の特許出願や文献を自ら報告するもので、これを怠ったり作為的に報告しないで権利となっても権利が無効になるなど厳しいペナルティが課せられるものです。
実は日本でも同じような制度があり、一番近いと思われる特許文献あるいは非特許文献を記載する努力義務が課されています。
これらを集計するのも一つの手ですが、やはり出願人の作為的な事項に相当するため信頼性に欠けると言わざるを得ません。
審査制度を採るすべての国で共通なのは、各国特許庁で行われる審査の際に評価される公知例の存在です。多くの場合、各国特許庁は出願公報、特許公報などの技術内容が明確な特許文献から公知文献を抽出します。この情報は中立的な立場であるはずの各国官公庁が調査した結果であるため出願人の恣意的な要素は入り込む余地はなく、前出のIDSなどより信ぴょう性は高まります。
現在、特許の価値評価を行う際、ライセンス実績、技術動向などと並び重要な一指標となっています。
結果は記事のタイトルも示すように、中国の発表論文が米国のそれを凌駕したことが明らかとなりました。分野はコンピュータ科学・数学、化学、材料科学、工学とのこと。米国は物理学、環境・地球科学、基礎生命科学、臨床医学で首位をキープし、主要8分野を分け合う形となりました。世界の科学技術は米中2強の時代となったと結論付けています。
当の日本はこの指標上は5~6位と低迷しているとのことですが、研究費に正比例するラインキングと思えばこればかりはどうしようもないのかもしれません。
米国は現政権の方針もあり、さらに順位を落とすのではないかという懸念も書かれています。