日本の工業力、産業力そして”稼ぐ力”の低下を嘆く声が聞かれます。それは本当なのでしょうか?
確かに新興国の発展は目覚ましく、センスさえも身に着けた”彼ら”には名実ともに水を開けられている感は否めません。認めたくなくても、そう思えてしまいます。
その差はどこから生じているのでしょうか。その理由の一端を気づかせてくれる記事が掲載されていました。
現代の工業製品に求められる要件はいくつかあるでしょうが、大きくは二つあるのではないでしょうか。一つは顧客に取り入る製品の設計力と、もう一つは開発スピードです。
一つ目の”顧客に取り入る”という部分は換言するとマーケットリサーチでしょうか。巷に出て、顧客に直接意見を聞くということがもっとも直接的な手法でしょう。「顧客の求めるもの」=「売れるもの」というのが命題であるという前提のもとに行われてきた企業意思の決定プロセスです。
これはこれで正しいのですが、誰でも情報取得が容易になり、さらには情報発信さえも可能なインターネットの時代になりました。このような時代には、欲しいものを欲しいだけ購入するという単純な思考だけではなく、”企業ブランド”に大きく左右されるのです。
たとえ顧客の求める製品を実直に上市したとしてもブランドが伴わなければ思うように売れませんし、逆にブランドが形成されている限り、卓越したところが見られない製品であったとしても一定の売り上げは上げられるでしょう。
もう一つの”開発スピード”は現代もっともクリティカルな要素かも知れません。早く開発して上市した方が市場シェアを取ることができる、というのはまっとうな摂理かも知れませんが、それだけではないはずです。
未開の市場であればあるほど、早く市場投入できれば情報を集めることができます。今までない製品であればマーケットリサーチのデータもありませんし、製品や売り方の何を改善して行けばいいのか戦略が立てられません。
言い換えると、つまり「情報戦」なのです。情報こそが大きな力を持ち商機を呼び込むのです。その原動力となっているのは、改めていうまでもなくインターネットの普及に他なりません。
”開発スピード”に関連する要素として、今の日本が抱えるようになってしまった大きな問題があります。それは企業決定の遅さです。
高度成長期の日本企業は一からのスタート、むしろゼロからのスタートかも知れませんが、失うものはそれほど大きくなかったはずです。日々改良・改善の繰り返し、良いことを思いつけばすぐにでも実行してきたはずなのです。だからこそ迅速かつ柔軟に開発方針を変えながら、市場の声を聞きながら、がむしゃらに突き進んできました。そうして世界の中で、現代の日本の地位が築かれてきました。
今の日本はどうでしょうか。会社が大きくなればなるほどリスクを取ることが出来ず決定のスピードが遅くなります。
大胆な決定が出来なくなったという声も聴きますが、リサーチの結果を疑うというよりも決定できなくなったというのが大きいように思います。
アイデアは温めていても金にはなりません。早く事業に結び付け、情報を収集し、分析して改善へとつなげる。それをどれだけ速く回せるかが事業を伸ばすための最善の策となるのです。
新興国と呼ばれる国が世界の経済バランスを変えるほどの発展を見せています。冒頭に示したように、彼らの作る製品は”安かろう、悪かろう”ではなく、先進国のそれを凌ぐ品質を持つものも少なくありません。
彼らが技術を盗んだなどと揶揄されることもありますが、おそらくは上述したような改善サイクルを回してきた成果なのではないでしょうか。
まるでかつての日本を見るようです。