技術的な側面として、当ホームページのメニュー「知的財産を取り巻く環境」(「形式知」と「暗黙知」)にも記載したように「形式知」と「暗黙知」という考え方があります。
「暗黙知」についていえば、たとえばすべてを語らずとも「あうんの呼吸」で相手に伝わる、あるいは伝統技術のように師匠から弟子に伝えられるような表現形式の技術です。そして「形式知」はマニュアルのような、そこに書かれていることを読めば誰にでもわかるように表現した知識であり技術を指します。
日本の伝統芸能は職人芸と呼ばれるように「暗黙知」に支えられてきたように思えます。日本の技術や文化は基本的に「暗黙知」で伝えられることが多く、企業の中でも新人研修はOJT(On-the-Job Training)が主に行われています。
記事では日本は古来からの「暗黙知」によって技術立国となったものの、国際化が進む中で却ってそれが弱みに転じることを指摘しています。
日本人同士で行われる何らかのシステム発注の様子を見ていると、発注者側もイメージでしか語ることができず、受注者側が提案するといった形で進むことが多い。受注者側が高いスキルを持っていないと発注者が思い描く最終成果物とならず、双方ともに損失を被ることがあります。
日本の場合、幸いにも受注者側が親身になって発注者の要望を取り上げようとするため滞りなく進むのですが、これが海外の受注者であった場合にはうまく行かないのです。
もう一つの事例が紹介されています。
これも同じような事例ですが、外国企業に仕事を依頼する際には明確に要求仕様を決定しなくてはなりません。どのようなシステムとするのか、どのような成果を望むのか事前に考える部分は発注者側にあり、受注者側はその仕様の成果物を出力することに注力します。
その仕様を考える部分については、彼らは仕様を考える能力が無いのではなく、考えるための報酬はもらっていないと考えています。つまり仕様策定を依頼するのであれば割増費用を負担しなければならないということです。日本の場合には、ざっくりとした費用見積もりの中の無償サービスとして行っているに過ぎません。
海外企業と契約を交わす際の契約書が、日本企業と交わす場合と比較して、微に入り細に入り事細かく書き込まれているのを見たことがあるかと思います。保険契約書が細かい文字でびっしりと書き込まれているのと同様のイメージです。
相手は責任範囲、免責条件、報酬条件、危険負担などなど、あらかじめリスクヘッジをしたうえで進めようとします。何か起きればうまく取り計らってくれるだろうという玉虫色の対応は期待できないと考えるべきで、まさに契約条件の「形式知」化といえます。
ズバズバと言ったりするのが苦手な日本人ですが、契約書と出願明細書は考えられる限りの項目を詰め込むとともに、のちのち誤解を生じないような表現を心掛けるようにしたいですね。