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特許侵害訴訟

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 民事事件において問題解決の最終手段は裁判をすることです。自力救済を認めない日本では裁判所で白黒つけてもらうことになります。もしも賠償などが取れることになれば、その時に初めて強制執行が可能になります。

 特許権も民法の特別法として扱われる法的な権利ですので、相手方とリーズナブルな条件で和解できないようならば裁判の途を取らざるを得ないかも知れません。
 しかし裁判を起こすとなると日本では特にハードルが高いと言えます。これが特許権などの知的財産権であればさらに困難さが伴います。なぜならば侵害証拠を原則として原告側が揃えなければならないからです。
 米国のようにディスカバリ(証拠開示)手続きが無い日本では、どうしても次のような課題があります。

 企業が日々開発競争を繰り広げている先端技術は企業秘密として厚いベールの奥にしまわれています。ある企業の製品に自社の特許が使われている疑念が高いとしても、本当にその技術が使われているのか証明することは困難です。疑念があるだけでは「疑わしきは罰せず」に倣い、証拠不十分で終わるケースが多いと思います。
 そもそも法廷で技術論争をするのは、技術者には自明の理であっても、裁判官に訴求できるかというと難しいと言わざるを得ません。

 だからこそ前述のような状況を鑑みて権利化段階から手を尽くさなければならないし、運悪く自社権利の侵害を知ってしまったときに打って出るか否かの判断も慎重にすべきなのです。

* * *

 これを踏まえたうえで、どうしても侵害訴訟を起こさなければならないこともあります。
 添付の記事は、業界2位に落ちてしまった企業(それでも2位ですから実力は折り紙付きですが)が、今やTOPの地位にある企業を特許侵害で訴えたという内容です。それも2度目ということです。
 本当に被害を受けている場合もあるでしょうが、多くの場合、業界内での地位の挽回を狙ったものです。

 保有する権利がどれだけ訴訟に強い権利であったとしても、必ずしも訴えなければならないということではありません。特許権などは親告罪ということになっていて、刑法に触れるような非親告罪ではないためです。自身の事業に大きな影響がなければ、わざわざ大金をつぎ込んで裁判を起こす必要はないはずです。一部には見せしめ的な対応として警告や訴訟をする場合もあるとは思います。

 つまり侵害訴訟を起こすのは決まって業界内で弱い立場にある企業の場合が多いと考えられます。
 業界のシェアを挽回したい、ライセンスして事業資金を調達したい、などと考えて権利行使するのです。ライセンス料などは既存資産の活用であり、基本的に追加の原価を掛けずに利益を生む好ましい収入源です。
 そもそも自社の技術がどこにも負けない卓越したものであって誰も真似できなければ、あえてお金をかけて裁判を起こす必要さえないはずです。そのうえで事業で利益を確保すべきです。ライセンス収入よりも事業収入を増やす方が間違いなく好ましいはずです。

 シェアの高い大手の企業は業界内でも影響力を持っているため、そういった手段に及ばずとも対処することが可能です。もしも裁判を起こされたとしてもいくつも回避策を用意することもできます。なのであえて裁判は起こしません。

 大手に運よく勝訴できたとしても、そのあとの立場が悪くなるなど結果的に事業につながるかどうかは疑問です。また一度はライセンス契約をしてくれたとしても、記事にあるようにライセンスの更新をしてくれるとは思わない方が賢明です。

 知的財産という夢のある話のはずなのに夢のないことばかり書いてしまいましたが、権利化だけはしておいていざとなれば裁判を起こせばよいだろうと考えるのはあまりにも早計です。

 権利を「転ばぬ先の杖」にしようとするのであれば出願前から先々のことを考えて熟考のうえ戦略を立てるべきかと考えます。

ニコン、再びASML提訴:日本経済新聞

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