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ブランドの保護

投稿日:2018年6月10日 更新日:

 ”店舗デザイン”というのはどういうことを指すのかご存知でしょうか?
従来の意匠権の思想からすると相いれないものなので、実務家であればあるほど縁遠いものかもしれません。逆に一般国民である生活者の方が馴染みが深いでしょう。

 この記事にも書かれていますが、某コーヒー店の外観が好例です。車で街を流していても、店の外観を見ただけで何の店か誰でもわかるでしょう。これはブランド戦略の一つであり、したがって他人に真似されたくない”権利”だと考えるはずです。

 しかしながら、今まで店舗デザインは意匠権では守れませんでした、いや、意匠権は与えられませんでした。だからこそ、記事にあるように不正競争防止法で争われたのです。営業を妨害する目的、他社に損害を与える行為として認めるよう提訴したのです。今回、その訴えは認められました。

 ならば、わざわざ意匠法を改正せずとも不正競争防止法で担保すればいいのではないかとならないのでしょうか。
ある程度は可能でしょうが、法律にはそれぞれ立法趣旨が与えられています。その大きな違いは損害の補償か、それとも思想の保護か、ということになります。

 ”ブランド”を守るにはブランドが毀損される前に対処できなければなりません。そのためにはどうしても知的財産権という相手の実施や準備段階で押さえることが可能な強力な権利による保護が必要なのです。

 ブランドの保護というと真っ先に思いつくのは企業ロゴのような商標権による保護です。しかし先に記したように立法趣旨が異なるのです。商標権は標章の無断利用を阻止するために行使される権利であるため、形は似ているけれど標章が付されていない製品には権利が及びません。
 ロゴが付いていないが酷似している製品の実施を阻止できないのです。同様に店舗デザインもまったく同じものはありえず、商標権をもってしても保護することはできません。
 この点、似ている(類似と言います)ものも権利範囲とする意匠権であれば保護することもできるのですが、いかんせん工業的な利用、つまり製品という物品に施された工業デザインを保護する従来の意匠権ではカバーできないのです。

 そこで従来の意匠権の物品性を広げ、店舗デザインを保護しようとする動きと解していただければよいでしょうか。立法されてから延々と受け継がれてきた「物品性」の縛りを改めようとする動き、これこそ注目すべき点なのです。いわば「諸刃の剣」。

 ブランドを守るための権利は何が良いのか。不正競争防止法? 商標権? あるいは意匠権?
そもそもどれもベストマッチしない、きわめてニッチな話なのです。

店舗デザインも保護 意匠権で特許庁方針:日本経済新聞

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