国内生産、販売に限らず、現代では外国からの輸出入が盛んにおこなわれています。特許等の実施には「輸入」も含まれていますので、外国から輸入する製品に日本の特許が使われていたら、その行為は権利侵害になります。そして製品は被疑製品となります。
製品の輸出入を考えた場合、以前から知的財産権などの法律は属地性があるために自国内に入れないということはできますが、それだけでは効果として危ういところがあります。
多国間の貿易の活性化を進めるため、関税の設定や違反時の制裁を取り決めた条約を結ぶことがあります。参加国の違いや締結内容によって実際にはいくつもの貿易圏が形成されています。
前回取り上げたTPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)もそうでしたが、残念ながら米国の離脱で発効が危うくなっています。
そういった自由貿易圏の取り決めの中で必ず知的財産権の取り扱いも規定されます。知的財産権は差し止めが可能な権利ですので輸出側としては妨げになります。一方、輸出相手の国内で自身の知的財産権が機能しないということになれば輸出しても利益が得られなくなることもあるので不都合があります。
現実問題として、他国からの日本への輸入に対しどれくらい差し止めがされているかは次の記事から読み取れます。
特許権を侵害 輸入差し止め:日本経済新聞
商標権関連の差し止めがダントツなのは偽ブランド品の輸入阻止として機能しているからです。見ただけでほぼ分かるものなだけに使いやすい面があります。一方で特許権による差し止めはほとんどありません。記事にもありますが、その理由は権利侵害の証明が困難だからです。
下記の記事は財務省が行っている「差し止め申請」がインターネット経由でできるようにするというものです。技術に詳しい当事者(つまり被疑製品に関連のある企業)から判別方法が知得できれば摘発率も上がるだろうということです。
これらは、ある製品が特定の発明を用いているか否かの判定は難しいということの現れです。侵害を証明しやすい発明、つまり明細書の書き方を工夫する努力を惜しんではいけません。
輸入品の侵害判定が難しい現状では、貿易圏形成のために取り交わす条約はますます重要になってくるのではないでしょうか。
特許権による輸入差し止めがほとんどないと書きましたが、昨年度は権利侵害差し止め物品中の3割を占めるなどかなり多かったようです。
特許侵害物品の輸入差し止め、前年の200倍に:日本経済新聞
記事を見る限り、特許侵害と認められた製品の大半はプリンタのカートリッジとのことです。
どの特許権にかかる差し止めかは定かではありませんがカートリッジの形状に関するものだと思います。つまり侵害発見が容易なものでしょう。
そして侵害訴訟や輸入差し止めは時間も金銭もかかるものと考えてください。勝ってもそれに見合うメリットが見いだせなければ選択しにくい対抗策ですね。