著作権に関係する話題が掲載されていましたので投稿いたします。
その記事とは、公立の小中一貫校の校歌の歌詞がJASRAC(日本音楽著作権協会)に著作権の管理を委託していることによって普段何気なく行っていることに対して問題が生じるのではないかというものです。
記事の内容を見てみると、著作権法で規定されている権利のうち、校歌の利用シーンによっては公衆送信権の侵害に当たるのではないかという懸念であることが分かります。
ここでいう利用シーンとは、例えば同窓会で校歌を歌ってみたり、学校で行われた合唱会といった場面を動画に撮り、SNSなどのネットにアップすることを言っています。
公衆送信権は著作権法第二十三条にあります。
つまり著作権者の許諾なしに公衆が閲覧可能に送信してはいけないのでは? という懸念です。
確かに権利侵害は成立する余地はあってご指摘の通りなのですが、これは明らかに過剰反応だと思います。たまたま作詞家が著名人であり、たまたまJASRACという第三者機関に管理を委託されていたというだけに過ぎません。
作詞家である著作権者が”学校行事以外で歌うこと”、”録音してアップロードすること”を禁止する意向を示していれば、懸念されている行為は侵害行為に当たります。ですが校歌という性格の著作物である以上、そういった行為は想定されているはずです。
ただし著作者本人にかかわる権利として指名表示権(同十九条)や同一性保持権(同二十条)、著作物の同一性を保持するための翻案権(同二十七条)を行使することは十分考えられます。
名声の盗用や不本意な改変を防止するための措置です、
この事件が大手ニュースサイトの記事になっているのは、最近のJASRACの著作権料徴収の動きが報道されるようになっていることも関連しています。JASRACが管理する著作物は、それに対する権利侵害が見つかればなんでもかんでも訴訟を起こされるのではないかという疑心暗鬼を煽っているに過ぎません。話題性のための記事というべきでしょうか。
当の著作権者が使用を認める(著作権侵害は親告罪のため黙認も同じ)限り問題とはなりません。しかしながら著作権者の意向によっては権利侵害ともなり得る行為ですので、自身の常識の範囲で判断せず、あらかじめ権利者に確認を取るなどしかるべき対応はしておいた方が無難です。