特許権などの知的財産にかかる権利は、一つには発明者たる創作した者が実施を専有することを認めています。それに反する行為をした他人は実施を差し止められたり、権利者に生じた損害を賠償しなければなりません。
こういった権利の行使には、少なからず他人の権利を制限することになるため、当然として第三者による権利侵害の事実確認が必要です。
また、警告を発しても相手が応じないとき、民法の規定によって自力救済(自ら実力を持って権利回復を果たすこと)は禁止されていますので、司法手続つまり裁判により解決することになります。
日本では権利侵害されていることは原則として原告側が立証する必要があります。(一部、みなし規定や推定規定があります)
それではあまりにも原告側が不利ということで、たとえば特許法第百四条の二(具体的態様の明示義務)のように、被告側が権利侵害を否認するときは被疑製品をどのように作ったかといった具体的態様の疎明義務が定められています。
一方米国では原告側の立証責任は日本ほど厳格とは言えず、被告側にとっては証拠開示手続(ディスカバリー)があるなど仕組的に権利を持つ権利者が優越される状況がみられます。
しかしながら、米国よりも原告側の負担が大きいうえ勝訴できる可能性も低く、日本で権利侵害訴訟が少ない大きな要因となっています。
記事によれば、米国の情報開示手続ほどではないものの、裁判の過程で弁理士などの専門家の意見を聞き被告側に関係情報の提出を要請しやすくする制度改定をするようです。
裁判所は被告側の人権などを考慮するあまり、相当の確証が見いだせなければ提出命令をすることはないでしょう。今回想定される法改正をしても、どれだけの効果があるかは未知数です。
もう一つ重要な観点にも触れています。パテントトロール(「パテントトロール」)の台頭です
上述のように、日本の特許侵害訴訟では原告側が不利な場合がほとんどなので、権利侵害訴訟による賠償金を投資のリターンと考えるのは割が合わない。従って米国で見られるようなパテントトロールは成立しないのです。
今回の改正では見送るようですが、賠償額算定方法の見直しもするようです。原告である権利者を保護するあまり賠償金額にキャップがかからないことになれば、日本も本格的な訴訟大国の道を歩み始めることになるでしょう。
国際協調のためにも法改正といった権利を有効に機能させるための施策は重要です。果たしてどちらが良いのでしょうか。
[…] ん。 日本では原告側に侵害立証の義務があるうえ、たとえ訴えてもコスト的、期間的に折り合いが付かず、なかなか踏み切れないことが多いと投稿したことがあります。(「侵害立証」) […]