自動車業界が100年に一度と言われる大転換期に入っているのだそうです。自動運転車の実現に向けて世界中で開発競争が繰り広げられています。
この波を乗り越えるためには積極的に外部の技術を取り込む施策が必要なはずなのに、自前主義が根付いている日本の産業構造の中にあってはまだまだ進んでいないと指摘されています。
報道では業界再編の名のもとに各社改革の話は聞くものの、結局は事業集約(事業分野の離合集散による効率化)に終始しているともいわれているようです。
この記事の中で取り上げたいのは、製品供給のそれぞれの段階において付加価値・利益率をプロットしたときに表れる「スマイルカーブ現象」についてです。
たとえば製品供給においては大きく次の段階を経て行われます。
- 研究・開発
- ブランド
- 設計・デザイン
- 製造・組み立て
- 流通
- マーケティング
- 販売・アフターケア
これらそれぞれの段階の事業が生み出す付加価値・利益率をグラフに描きます。すると4番目の製造・組み立て事業を底辺とした弓なりのカーブが表れます。笑っている口元に見えるためにこう呼ばれるそうです。
これは研究・開発を上流、販売・アフターケアを下流とすると、より上流あるいは下流では付加価値が高く、中盤ではおおむね低くなることを表しています。
中盤の工程の付加価値が低くなるのは、製品製造に必要な部品の標準化が進んだことが原因とされています。
たとえばPC、携帯電話はCPU、通信チップといった機能単位の部品が市場に供給され、部品ベンダから出ているデータシートに従っていくつかの半導体チップを組み合わせるだけで、横並びではあるものの高性能でばらつきのない製品が簡単に製造できてしまいます。以前、「標準化」で示したのと同じことです。
従来は高度な電子技術が必要で製品化が困難だった擦り合わせ型(インテグラル型)開発製品が、組み合わせ型(モジュラー型)開発製品に転換された好例です。これはあくまで一例に過ぎず、電子化が進んだあらゆる製品で同様の現象が進行しています。
つまり製造・組み立ては参入障壁が低くなりレッド・オーシャン(過当競争)化した結果、利益率が低い分野になってしまったという分析です。
現在の中国、あるいは一昔前の日本の産業の多くは「製造・組み立て」を生業としていました。実はこの世代のスマイルカーブは「逆スマイルカーブ」になるのだそうです。つまりは「製造・組み立て」段階が最も利益率が高い状況が成立します。
実際のところ、製造・組み立て段階の利益率が高いというよりは、上流や下流の利益率が著しく低いといった方が正しいかもしれません。上流の研究・開発で利益を上げるためには卓越した”技術力”、”発想力”が必要になりますし、下流の販売・マーケティングは”販売チャネル”の構築・維持が不可欠です。それらを一から始めたとしたら、利益が出ないのは明白です。
日本の産業は製造・組み立てを効率よく、かつ不良率を極限まで抑え込むことで、低コスト、高品質、高付加価値な製品を実現したことで国際社会で競争力を維持できていたと考えられます。
しかしながら今後の日本の厳しさは折に触れて報道されているところです。従来の逆スマイルカーブがグローバル化などの影響でスマイルカーブになったのであれば、取り得る途は分かっています。国際社会の中で、今より上流か下流の付加価値・利益率が高い分野の役割を担うように業態をシフトしていく必要があります。
製造業を脱却したことで成功した有名企業を挙げれば枚挙にいとまがありません。既存事業の再編に止まらず、業務全体について事業の取捨選択を考えるべきでしょう。
会社の存続がもっとも重要視されるとはいえ、創業当時からモノづくりの会社であったものが、そこからどんどん離れていかざるを得ない状況があるとしたらなんともやるせません。
”技術の空洞化”などともよく言われますが、これらの現実を踏まえればそれはそれで正しい経営判断ということになるのだと思います。