今回添付の記事は日経新聞の「経営の視点」という、社説になるのでしょうか、そこに掲載されていたものです。
”新参者”といえば、昔からそこで幅を利かせているような”古参”の反対の意味になります。昔から事業をしており、一定のシェアや事業規模を獲得している企業ということになるでしょう。
特に製造業の世界では、産業向けの観点から見た技術革新という純粋な技術の進歩と、一般消費者向けの観点から見た商品開発の二つが業界の運命を握っているように思います。
技術の進歩があればこそ、製造効率の向上を目論んだ製造設備の刷新という設備投資が図られます。また大量消費の主役である消費者のライフスタイルや嗜好の変化にもとづき、製造すべき商品も移り変わります。そしてその二つが交錯し合い、鶏が先か卵が先かの議論のように、お互いが刺激し合って変遷しているようにも感じます。
記事中にあるスマートフォンなどはその典型的な商品であり、消費者は世の中に今までになかった商品を受け入れるも、メモリやCPUの低消費電力化、高性能化の進歩により現実の製品として製造することができるようになり、また商品が売れることで技術のさらなる進歩が図られる。
スマートフォンが登場した当時は近い将来に何が起こるのか、予想できた人はそれほどいなかったはずです。色濃く影響を受けたのは、記事中にもあるように単機能に近いパーソナル機器であったろうと思います。スマートフォンが多機能であったが故に、それまで便利に使っていた個別のガジェットが統合されたのです。
さらに言えば、機械的な進歩により世界の先頭を走っていた日本は、ソフトウェアによる機能実現が可能になるに連れ、表舞台のトップランナーから裏方に転身を余儀なくされてしまいました。未だにデバイスや微細なメカ系では優位性は維持しているとは思いますが。
記事に登場する上述のようなガジェットの開発者であった氏は、消費者離れの進む”古参”の事業から”新参者”となる新規の事業に転職しました。そこでは機械が主役となるべき新たな分野が拓けていたのです。
まさに現代産業の象徴ともいうべき”ロボット”の分野です。ソフトウェアだけではどうにもならない新たな需要が生まれていたのです。
古参の事業を維持するのも大切ですが、新たな商品を世に問うことも必要なことです。
経営論の世界ではPPMと呼ばれるチャートが存在します。それは市場占有率を横軸に、市場成長率を縦軸に取ったチャートで、さらに四象限に分割されます。そこには成長事業である”花形”と、もはや収益を生まない”負け犬”と、そして企業のキャッシュフローを支える”金のなる木”となる事業分野があります。
モノになるのかどうかわからない”問題児”を”花形”にする我慢強さとともに、企業の体力ともいえる”金のなる木”事業の維持の両面の事業戦略が求められます。
話が逸れましたが、”古参”事業は継続して収益性を求められる厳しい立場に置かれます。企業を支える事業であるがゆえに途中で”負け犬”になることが許されません、よって新たな動きは起こし難いと言えます。
一方で、将来性は明るいがシェアも実力もまだまだという”問題児”は、失敗するのもまだ気が楽です。
こういった心境を、かの有名経営者が語っています。
やはり、失敗を恐れていたら革新は起こし難いということなのでしょう。